骨髄 異 形成 症候群 の 最期。 骨髄異形成症候群の最新治療 2つの顔を持つやっかいな病気。分子標的薬やサリドマイドの出現で希望も

骨髄異形成症候群の最新治療 2つの顔を持つやっかいな病気。分子標的薬やサリドマイドの出現で希望も

骨髄 異 形成 症候群 の 最期

発症から移植までの10数年間 バスケに明け暮れていた高2の秋頃、手の甲が異様に腫れて病院へ。 「骨髄異形成症候群(MDS)」と告げられました。 この病気は発症しても症状が悪化しない限り、薬もなければ治療方法もなく、血液検査だけの経過観察が10数年経過しました。 病状に変化がないので、血液検査の間隔もだんだん空いていき、次第に病気だという自覚も薄れていくほどでした。 けれども30代になった頃、登山で動悸とひどい頭痛がして、様子がおかしいことに気づきました。 診察を受けたところ、再生不良性貧血に近いタイプのMDSとわかりました。 当面の治療方法は輸血だけ。 医師からは「骨髄移植しかない」と。 兄と弟のHLA検査の結果、2人は同じ型だったのに私とは不一致で、とてもショックでした。 移植の決断は父の言葉 リスクを含めてありとあらゆる情報を集めました。 患者会のセミナー等にも出席して、移植のほかに選択肢がないかどうか調べました。 なかなか決心がつかない私に、最後に背中を押してくれたのは父の言葉です。 「人生には何度か勝負しなければならない時がある。 千英には自分で決断する力がある」。 3度のセカンドオピニオンを重ね、最終的に大阪の移植病院に決めたのは直感でした。 同じ病棟に私と同年代の患者さんは1人だけでしたが、その方と病気の悩みを分かち合うことができました。 患者さんのブログサイトでも情報交換ができたことは心強かったです。 移植後の闘い 2012年1月に骨髄バンクに患者登録してすぐにドナーが見つかり、移植を受けたのは6月。 その間に卵子保存を行うことができました。 移植後、一番つらかったのは薬が飲めないことです。 口やのどの粘膜がただれて水も飲めない状態で、そのつらさは想像を絶するものでした。 移植後のきびしい服薬治療 そのとき何よりも慰めてくれたのは、義理の姉が作ってくれた家族のアルバムです。 家族1人1人の写真とメッセージに涙があふれました。 家族のアルバム 移植前処置の直前に、担当医師が「自信と経験があるから大丈夫」と言い切ってくれたことも支えになりました。 それが信頼関係につながり、患者にとってすごく大事なことだと、折に触れて医師の方々に話しています。 ドナーさんから頂いた造血幹細胞が体に生着して新しい血液が造り出されると、苦しみは嘘のように消えていき、9月には退院できました。 最上級の「ありがとう」 以前は事務職でしたが、通院しやすいよう営業職に変わり、今では病気だったことが信じられないほど元気に活動しています。 小さい会社ですが「ドナー休暇制度」ができました。 勤務先にこういうバックアップ体制があると、ドナーさんにとっては、提供に前向きになれると聞いています。 これを機にほかの事業所にも広がっていくとうれしいです。 病気でつらい時期は本当に苦しい時間ですが、今病気と闘っている患者さんへは「上がらない雨はない」と伝えたいです。 苦しいことがあってもいつか必ず嵐はやむ時が来ることを信じてほしい。 ドナー登録してくれた方には、もし適合したら一度は話を聞いてほしいと思います。 いろいろな事情があって提供が難しいこともあるでしょうけれど、せめて一度お話を聞いて、それから判断してもらえればいいなと思っています。 こうして命を分けてもらったことへの感謝でいっぱいです。 最上級の「ありがとう」を探しているけれど、ほかに言葉が見つからないです。 弟の哲平さんと千英さん.

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骨髄異形成症候群

骨髄 異 形成 症候群 の 最期

骨髄異形成症候群とは 血液の成分は、血漿と、身体の隅々に酸素などを運ぶ赤血球や細菌を殺す白血球や出血を止める血小板などの血液細胞です。 血液の細胞成分やそのもとになる細胞(造血幹細胞ないし血液前駆細胞)は骨髄で造られます。 正常な状態では、造血支持組織のなかで、幹細胞や前駆細胞が赤血球、白血球、血小板に成熟していって、それぞれの働きと役割を担うことになります。 一般的に血液のがんは、血液の細胞成分やそのもとになる細胞がなんらかの異常をきたし、一部の細胞だけが増えてしまったり、それにより他の細胞成分が増えることができなくなった状態です。 その発症のメカニズムはまだ特定できていません。 いろいろな原因が重なりあって起こると考えられています。 骨髄異形成症候群という病気も、細胞の中にある遺伝子や、それがのっている染色体の異常であるということがわかってきています。 この病気は血液のおおもとの1個の幹細胞がわずかに異常を起こし、きわめてゆっくりと身体の血液成分全体に異常が起きてくる状態と考えられます。 その結果、骨髄が血液を造るという正常な働きをしなくなり、身体全体に正常な血液細胞を送り出せなくなるためさまざまな身体の異常を呈してきます。 骨髄異形成症候群は、以前から「前白血病状態」とか「くすぶり型白血病」と呼ばれたり、あるいは、治療に反応しにくい原因不明の貧血の一部として扱われてきました。 この病気には、厳密には、いろいろな程度や状態があり、いくつかの病気が寄せ集められたものとして考えることもできます。 この病気は50才以上の年齢および高齢者に多く、わが国でも人口の高齢化とともに増加傾向にあると考えられています。 抗がん剤などの薬物治療、あるいは放射線治療を受けた場合などには、二次性の骨髄異形成症候群が起こることもあります。 また骨髄異形成症候群から、急性白血病になってしまう場合もあります。 急性白血病については、「」の項を参照して下さい。 症状 骨髄異形成症候群に特有の症状というものはありませんが、病気の種類と進行度にしたがって、疲れやすい、だるいなどの貧血症状、皮膚に青あざが出るといった出血傾向、原因不明の発熱などの症状が出現します。 これらは、身体の中の血液の不足や異常により引き起こされる病態なのですが、なかなか診断がつかないために、「白血球減少症」とか「汎血球減少症」などの、暫定的な病名をつけられることもあります。 これらの症状を自覚したら、まずかかりつけの医師に相談し、必要ならば専門医師を受診すべきでしょう。 診断 自覚症状や今までかかった病気の経歴に加えて、診断には一般的な血液検査や骨髄液検査が必要です。 それら検査にもとづいて以下の5つのタイプに分類されます。 それによって治療法が異なります。 また、最近では、さらに詳細な分類がWHOから提唱されており、今後はWHO分類に基づいた診断や治療戦略が検討されていくと考えられます。 1 不応性貧血 貧血を主症状としますが、白血球減少、血小板減少を伴うこともあります。 骨髄の中の未熟な芽球(悪性と考えられる細胞)は5%以下です。 2 鉄芽球性貧血 不応性貧血とほぼ同じ特徴を示しますが、骨髄の中に環状の鉄分を含んだ未熟な赤芽球というものが認められるのが特徴です。 1と2を合わせると、頻度は骨髄異形成症候群の中の30~40%を占めます。 3 骨髄芽球の増加した不応性貧血 骨髄の中の未熟な芽球が5%以上、20%以下の状態です。 典型的な血液および骨髄の異形成像が認められます。 同じく、この病態の頻度は20~30%です。 4 骨髄芽球が悪性化し、かつ増加している不応性貧血 骨髄の中の未熟な芽球が20%以上、30%以下の状態です。 末梢血にも未熟な芽球が出現しはじめます。 頻度は同じく30~40%です。 未熟な芽球が30%以上となると、すでに急性白血病へ移行したものとみなし、治療を開始します。 また、原因別に以下のように、一次性の骨髄異形成症候群と二次性のものと分けて診断されます。 明らかな原因がなく発病した骨髄異形成症候群: 発病の原因となる放射線治療も抗がん剤治療も受けたことがない場合 B. 二次性の骨髄異形成症候群: 他の疾病に対する放射線治療を受けたことが原因である場合、または抗がん剤治療 化学療法 を受けたことが原因である場合 病期(ステージ) 骨髄異形成症候群には他の固形がんのような確定的な病期分類というのはありません。 ただし、あえて分類するとすれば、診断の項目の1. 不応性貧血と、2. 骨髄芽球の増加した不応性貧血と4. 骨髄芽球が悪性化し、かつ増加している不応性貧血は、段階的に進行することも多く、一応の病期分類と理解することができます。 治療 治療方法には、症状に応じた対症的な治療と積極的な治療方法とがあります。 年齢、健康状態によっても違ってきます。 治療もその種類と進行度に応じて異なります。 1 無治療、経過観察 不応性貧血の初期では、診断が確定してからも輸血をする必要もなく、無治療で経過観察のみで良い場合も少なくありません。 貧血に対して、ビタミンB12、葉酸などの薬剤は無効です。 また再生不良性貧血でしばしば使用される男性ホルモン剤も使用されますが、その効果は確立されていません。 2 赤血球輸血、血小板輸血 対症療法の一つです。 貧血が進行している場合、その症状改善のために赤血球輸血を行います。 貧血が進行は病状の進行と無関係ではありません。 通常、ヘモグロビン値というものが8以下になった場合、貧血による症状がでてきますし、輸血の適応と考えられます。 血小板数が少なく、出血傾向のある場合には止血剤の内服治療が必要です。 血小板数が2万以上であれば、出血症状のない限り血小板輸血は必要ありません。 しかし、これより減少した場合や、出血があり止まらない場合は、緊急の血小板輸血が必要となります。 白血球減少症には無治療で経過を見ますが、身体の抵抗力が弱って感染症を併発しやすくなります。 3 化学療法および細胞増殖因子などによる生物学的治療 これらについては有効性が証明されていないので、いくつかの臨床試験が行われています。 1 化学療法 抗がん剤には、注射薬または内服薬があります。 化学療法は、骨髄中のがん細胞を殺す目的で行われます。 ただし化学療法は全身の治療であり、全身に行き渡る薬あるいは抗がん剤の投与を受けるわけですから、白血球減少症、血小板減少症、脱毛、吐き気といった副作用も起こります。 最近、分子標的療法薬が開発されて、臨床使用可能となってきています。 ビーダーザは異常細胞のメチル化に関わる細胞伝達経路を遮断する薬剤で、MDSに対する治療効果が報告され、実際に臨床応用されています。 2 生物学的治療法、細胞増殖因子など 自分の身体の細胞をさらに刺激して、病気と一層たたかうようにしむける治療で、身体自体にすでにあるものをさらに実験的につくりなおし改良し薬として注射し、病気に対する身体の防御力を高めたり、保ったりさせます。 白血球を増やす薬物や赤血球を増やすホルモン剤が、骨髄異形成症候群に有効であるかどうか、現在さまざまの臨床研究が進められております。 また、分子標的療法薬の一つとして、レブラミドが発売されています。 レブラミドはサリドマイドの誘導体であり、5番目の染色体の欠失を有するMDSの症例に対して高い有効性が報告されています。 4 造血幹細胞移植 比較的発症年齢が若い場合には、骨髄移植治療が実施されることがあります。 詳しくは「」の頁を参照して下さい。 診断および病期別の治療および予後 1 明らかな原因がなく発病した骨髄異形成症候群 1 不応性貧血および鉄芽球性貧血 無治療、経過観察ないし輸血治療が主体となります。 経過をみているだけで悪化するものは60~80%と多く、5年~10年生存率が10~20%とされていますが、これは欧米での報告であり、日本の場合にあてはまるかどうかは不明です。 長期生存の場合には、長期間の輸血による合併症(肝炎、鉄分の沈着など)の対策が必要となります。 急性白血病に移行するのは10%前後といわれています。 2 骨髄芽球の増加した不応性貧血 対症治療に加え、抗がん剤による化学療法(白血病治療薬の少量持続投与や標準的な併用治療)の適応と考えられます。 時に細胞増殖因子なども補助治療として必要になります。 3 骨髄芽球が悪性化し、かつ増加している不応性貧 病状がさらに進行していて、抗がん剤による化学療法が通常必要とされます。 半数以上が急性白血病に移行します。 2 ~ 4 の病型の予後は非常に悪く、2年生存率が約20%、5年生存率が約10%以下です。 化学療法により40~50%が、悪性細胞が減少した寛解状態に到達しますが、その持続期間は1年程度で化学療法による治癒ということは期待できません。 つまり現在の治療手段では、骨髄移植を除いて治癒は望めません。 したがって、• 病気により起こる症状(貧血、出血など)の治療法の改善、のみならず、• 新しい化学療法、同種骨髄移植の臨床試験、あるいは新規の生物学的活性物質の臨床試験などの治療研究 が現在、積極的に進められております。 2 二次性の骨髄異形成症候群 病型毎の治療法は同じです。 しかし、二次性の場合には化学療法に対する効き方も、予後も非常に悪く、治癒ということはほとんど望めません。 従って、症状がある場合、貧血、出血などを改善する対症治療をはじめに行い、その後は原因となった病気の治療をします。 同じく化学療法の臨床試験、あるいは新規の生物学的活性物質の臨床試験が、積極的に進められております。 治療の副作用と対策 輸血は主に赤血球輸血を行います。 最近の血液製剤は安全性が高くなってきていますが、輸血による急性、慢性の副作用が起こることもあります。 特に不応性貧血の場合、輸血の回数がどうしても多くなりますから、赤血球輸血に含まれている鉄分が身体の主要臓器に蓄積したり、皮膚に沈着したりして、肝硬変や心不全になったり皮膚が黒色になることがあります。 抗がん剤の投与を受けている場合は、白血球減少症、血小板減少症などの副作用がでます。 抗がん剤により正常な血液細胞も障害を受けやすいためです。 最近のいくつかの細胞増殖因子の副作用は、受ける量にもよりますが、発熱、骨痛、倦怠感という症状が出ることがあります。 いずれにせよ、骨髄異形成症候群という診断を受けた場合、どのような病型に属するのか、また、どのような治療をどういう目的で、いつまで受けるのか、また受けているのかということをよく説明を受け、さらに自分でも理解し納得した上で治療を続けてください。 治癒率と予後 骨髄異形成症候群は、初期の病型であっても血液を造るおおもとの幹細胞が機能不全に陥るか、あるいはがん化したのですから、それが自然に正常なものに戻るということはほとんどありません。 死因は主に感染症および出血です。 高齢者に多い病気であること、また根治治療が無いということから、輸血などの対症治療を続けることが多いのですが、次第に正常な血液の成分がなくなっていくという場合や、途中から急性白血病になる場合もあります。 ただし対症療法により貧血症状や出血傾向が改善したり、発熱や全身倦怠感といった症状がとれることは期待できます。 つまり病気を治すことはできなくても、病気の症状や進行に気を付けていれば、日常生活を支障なく送ることもできます。 さらに最近では、新しい細胞刺激因子を使う治療方法や抗がん剤治療、あるいは若年者には積極的に同種骨髄移植が開発、推進されつつあります。 以上の情報はがん情報サービス係制作のものを元に作成しました。 不明な点、お問い合わせのある方は下記まで御連絡ください。 〒951-8566 新潟県新潟市中央区川岸町2-15-3 新潟県立がんセンター病院 「」のページへ• TEL: 025-266-5111 FAX: 025-266-9385 Email:.

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骨髄異形成症候群 生活と療養:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

骨髄 異 形成 症候群 の 最期

「グアデシタビンやリゴセルチブが承認されて使えるようになったら骨髄異形成症候群の治療の幅がグッと広がると思います」と語る照井康仁さん 低リスクと高リスクでは、治療法も心構えも違う骨髄異形成症候群(MDS)。 いずれも、完治には造血幹細胞移植しか方法はないが、年齢や状況的に移植を受けられないことも多い。 今のところ、高リスクの決定打はビダーザだけだが、今後、RAS遺伝子にピンポイントで作用する分子標的薬が出てくる可能性があるそうだ。 骨髄異形成症候群は「がん」なのか? 骨髄異形成症候群(MDS)とはいったい何なのか。 そこから話を始めよう。 我々の血液には、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞(血球)があり、それらはすべて、おおもととなる造血幹細胞から分化して作られる。 すべての出発点である造血幹細胞が、まず初めに骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分化し、そこからさらに分化を繰り返して、血液細胞になっていくわけだが、その第1段階である骨髄系幹細胞のときに細胞内の遺伝子に何らかの原因で傷がついてしまうと、正常な血液細胞を作ることができなくなっていく。 これを骨髄異形成症候群という。 「骨髄を血液生産工場に例えると、工場はフル稼働して血液を作っているのに、できあがるものは不良品(異常な血液細胞)ばかりという状態に陥ってしまうのです。 形がいびつだったり、壊れやすかったり、正常な働きができなかったり。 これを無効造血といいます」 そう語るのは、がん研有明病院血液腫瘍科部長の照井康仁さん。 それらは芽球(がきゅう:血液細胞になれなかった不良品=白血病細胞)となり、工場(骨髄)から出ていけずに息絶えること(細胞死=アポトーシス)も多いが、血中に出ていったとしても、正常な血液細胞の働きをすることはできない不良品。 こうして、血中には不良品ばかりが増え、赤血球、白血球、血小板といった正常な血液細胞は、ジワジワと減っていく。 もとはたった1つの骨髄系幹細胞に起こった遺伝子異常から、時間をかけて体全体の血液細胞が減少していくわけだ(図1)。 「以前は、〝白血病の前段階〟などと言われていましたが、病気の発症メカニズム(機序)を見る限り、骨髄異形成症候群も血液がんの1種と認識したほうがいいと思います」と照井さん。 つまり、骨髄異形成症候群は、骨髄系幹細胞の時点で遺伝子に傷を負ったことが原因の「血液のがん」。 高齢者に多く、抗がん薬治療も原因に 骨髄異形成症候群は、もともと高齢者の病気と言われてきた。 年齢を重ねるごとに細胞分化の回数も増えるため、骨髄系幹細胞の遺伝子に傷がつく確率も増す、ということが考えられるわけだが、それとともに、老化で遺伝子そのものが不安定になり、傷つきやすくなることもあるそうだ。 また、皮肉なことに、がん治療のための抗がん薬治療も、骨髄異形成症候群を引き起こす要因になっている。 強い抗がん薬治療を受けた後、5年~10年を経て骨髄異形成症候群を発症する人が少なくないそうなのだ。 「以前は放射線治療も要因の1つと言われてきましたが、治療で使う放射線量ならば考えなくていいと思います。 ただ、原爆被爆は大いに関係あります。 広島と長崎に骨髄異形成症候群の患者さんが多いのは偶然ではありません」と照井さんは語る。 骨髄異形成症候群を完治させる方法は、唯一、造血幹細胞移植だけだという。 しかし、そもそも高齢者に多く、抗がん薬治療を経たがんサバイバーに多い病気。 状況的に造血幹細胞移植が困難である場合が非常に多い。 もちろん、コンディションが整うならば、第1選択肢は造血幹細胞移植だ。 しかし、それが叶わぬ場合の治療法について、ここから見ていこうと思う。 人間には46本の染色体があり、骨髄異形成症候群の中には、5番目の染色体の長腕部(5q)に欠失が起きているタイプがあって「5q-(ファイブ・キュー・マイナス)症候群」と名づけられている(図2)。 症状やリスク段階が幅広く、治療法の選択が難しい骨髄異形成症候群において、5q-症候群だけは、遺伝子のどこに何が起こっているかが明確で、治療法が確立している。 かつ、比較的予後(よご)がよいものが多いそうだ。 確定診断と同時に判明するので、まずは5q-症候群の治療について触れておく。 治療薬は *レブラミド。 「これはがん細胞を攻撃するのではなく、免疫力を高めることでがん細胞にアプローチする免疫調整薬の1種です。 1990年代に難治性骨髄腫(なんちせいこつずいしゅ)に使われていたサリドマイドと作用機序は同じですが、サリドマイドの効果を高めるように、かつ副作用を小さくするよう構造を変えた薬です」と照井さんは説明する。 5q-症候群の骨髄異形成症候群に対してレブラミドは明らかに奏功し、2010年に承認された。 免疫からアプローチするということで、骨髄異形成症候群全体に効果があるのではないかと期待され、臨床試験が何年も繰り返されてきたが、残念ながら結果は出ていないとのこと。 よって現時点では5q-症候群のみに適応されている。 ただし、5q-症候群は欧米人には比較的多いものの、日本人には極めて少ないそうだ。 *レブラミド=一般名レナリドミド 低リスクの治療法は、経過観察と支持療法 さて、ここからは、一筋縄ではいかない「骨髄異形成症候群」の治療法について述べていく。 「症候群」と言うだけあって、リスク段階も幅広いのが骨髄異形成症候群。 低リスクと高リスクでは、同じ病気とは思えないほどの違いがある。 血液検査と骨髄検査を経て「骨髄異形成症候群」の診断がつき、「5q-症候群」でなかった場合、まずは、リスク分類を明確にして、いまの病態がどの位置にあるかを見極めることが重要になる。 その指標となるのが、骨髄異形成症候群の予後を予測するIPSS(International Prognostic Scoring System:国際予後判定システム)。 骨髄中の芽球の割合、染色体異常、血球減少の程度を点数化し、その時点での状態を、低リスク、中間リスク1、中間リスク2、高リスクの4段階に分類する。 その上で、低リスクと中間リスク1を「低リスク群」、中間リスク2と高リスクを「高リスク群」と考えるそうだ。 指標にはIPSSとIPSS-R(改訂IPSS)があって、IPSS-Rは血球減少についての項目が詳しくなり、赤血球、白血球、血小板を個別に見るそうだが、「診断の際は、両方を照らし合わせて判断し、1人ひとりの状態に即して治療戦略を立てます」と照井さんは語る(図3)。 低リスクと高リスクで大きく違うのは「治療介入の仕方」だそうだ。 低リスクと高リスクでは、治療法から心構えまで、全く違ってくるそうだ。 「低リスクの治療は、血中に正常な血液細胞を補うことが主たる目的になります」と照井さん。 血中に不良品の血液細胞が増えて、正常な血液細胞が減ってくると、赤血球不足だと貧血、白血球不足だと感染症や発熱、血小板不足だと出血といった症状が出始める。 こうした症状に対しては輸血で正常な血液細胞を補うわけだが、輸血を続けていくと、体内に鉄が溜まり過ぎ、心臓や肝臓に負担をかけて障害を起こしてしまうことがある。 ときには心不全や肝硬変といった命に関わる事態にも陥りかねないので、細心の注意が必要だ。 できれば輸血をしたくない、せめて輸血の回数を減らしたい、ということで着目したのが、エリスロポエチンという腎臓のホルモンだ。 エリスロポエチンは腎臓で作られる造血因子で、赤血球の産生を促す。 そこで、このエリスロポエチンを細胞レベルから作り出し、さらに実際のエリスロポエチンと同じように赤血球の産生を促すよう遺伝子を組み換えた。 そして誕生した薬が *ネスプだ。 2014年末に承認以降、骨髄異形成症候群に伴う貧血に使えるようになり、輸血量を減らすことができるようになったそうだ。 「輸血を長く続けることは、体へのリスクが大きい」と照井さんは言う。 正常な血液細胞を増やすのに、最も手っ取り早い方法は輸血である。 けれども、輸血に伴う鉄過剰症や感染症のリスクを考えると輸血は最小限に抑えたほうがいい、というのが照井さんの考えだ。 ちなみに、輸血で鉄が増えすぎた場合は、今も鉄キレート剤である *エクジェイドや *ジャドニュによる除鉄療法で対応するそうだ。 *ネスプ=一般名ダルベポエチン アルファ *エクジェイド=一般名デフェラシロクス *ジャドニュ=一般名デフェラシロクス.

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